日本の食料安全保障の脆弱性/物量が止まると日本は野菜が作れなくなる

■ 日本の食料自給率は38%のみ、62%は輸入
農林水産省によると、2021 年の日本の食料自給率は38%(カロリーベースによる試算)となっています。
日本で食べられている食料は、38%だけが国内で生産され、残りの62%は海外からの輸入に頼っているのです。
また、日本の食料自給率は、1965 年には73%でしたが以降は年々減少し、今では38% にまで落ち込んでいます。
それでは、食料自給率を主な先進国と比較してみましょう。
農林水産省のデータでは、カナダやオーストラリアの食料自給率はは200%以上もあり、アメリカ・フランス・スペインが100%を超えています(グラフにはありませんが、ロシアは125%です)。
また、他のヨーロッパの国々も概ね60%前後です。

■ 本当の食料自給率は10%以下 
しかし、ここで言う「自給率」は「成果物」のことであり、生産の基となる「野菜の種」の自給率は10%のみです。
例えば、日本では野菜の自給率は80%と言われていますが、物流が止まると「種」が輸入できず、野菜の生産量は8%になってしまうのです。
また、米の場合は「国がお金を出して県が良い種を作る事業」を行っていたのですが、種の生産が民間に切り替わってしまった上に農家による自家増殖も制限されたそうです。
生産が民間事業になると、採算重視で海外に依存するようになる可能性が高く考えられ、安全性や安定供給にリスクが生じることになります。

■ 化学肥料は100%輸入 貿易が止まったら?
日本の農家の99.4%が化学肥料を使う農業を慣行していると言われており、化学肥料が使えなくなると生産量は半減してしまうでしょう。
しかし、その肥料はほぼ100%を輸入に頼っています。
万一紛争などが勃発し物流が止まるような事態が発生すると、種が輸入できなくなり一気に食料危機が訪れます。その時は、日本の野菜の自給率80%は、1/10 に落ち込み8% に下がってしまうのです。
現在、化学肥料の輸入には次のような問題があります。
・中国は、自国の需要が増えたので輸出しないと表明している
・ロシアとベラルーシは、ウクライナ問題で日本を敵国として捉え、売らないと言っている
また、家畜の餌も深刻です。例えば、鶏の卵は97%の自給率ですが、餌のとうもろこしは100%を輸入に頼っています。

■ 世界のどこかで地域紛争が起きると、物流が止まり、日本は農作物が作れなくなって数1000 万人が餓死する?
2022 年8 月、アメリカのラトガース大学で「核戦争が起きた時の世界の犠牲者数」が試算され、科学誌ネイチャー・フードに査読済みの論文が掲載されました。
この論文では、大きな核戦争が起きた場合は世界で50 億人が犠牲になると試算されていますが、注目すべきは「局地的な核戦争」が勃発した場合の記述です。
「局地的な核戦争」では、被ばく自体で2700 万人、さらに2 年後には食料が不足して2 億5000 万人が犠牲になると試算され、驚くことにそのうち3割の7200 万人が日本人(日本の人口の6 割)とされています。
世界的な戦争が起こらなくとも、物量が止まることで簡単に食糧危機が訪れ、日本は世界最大のリスクを抱えているのが現状です。本当の食糧危機はこちらかも知れません。